キャンディ・キャンディ事件について

当初、この事件に関する理解は、漫画家側が暴走して、原作者側がつむじを曲げたという理解だったのだが、Twitterで下記ツイートを読み、必ずしも単純な様相ではないようにも。

こんなのが流れて来るか…。後付けでヤマトの原作者と強弁した松本先生は自業自得だが、担当編集者とキャンディの原案を作り上げたいがらし先生は、編集部が後付け起用した脚本書きに原作の権利を全て取られた立場。いっしょくたにして欲しくない…。


岡崎氏ツイート1

先程の引用リツイートにかなり反響がありましたので、少々補足します。当時キャンディの二次使用について、いがらし先生は著作に再び日の目を充てるためあらゆるプレゼンを試みていました。それにことごとく反対して企画をつぶしていったのが原作肩書きの方です。


岡崎氏ツイート2

当時、共同原作者であれば当然のごとくその権利の使用を相手に求めることが出来る同意請求という権利をいがらし先生はご存じありませんでした。ことごとく企画に反対されて行き詰っていた先生に、とある弁護士が「権利を勝ち取りたいのなら、全ての権利を主張し、裁判の中で少しだけ相手に分け前を」


岡崎氏ツイート3

さて、昨日のツイートの最大の問題点だけ書いておきましょう。 件の裁判の結果は、原案原作の権利を原作肩書きの方と認め、いがらし先生はキャンディの漫画作品以降の共同原作者と認められました。 この結果キャンディ関連の絵は商業的には原作肩書きの方の許諾がない限り一切描けなくなったのです。


岡崎氏ツイート4

そして何よりも、キャンディは漫画家が作品の原案プロットを作り、そのキャラクターデザインをしたという事実が、時系列で原作肩書きの方の作品参加以前である事を裁判長は認めながら、それは作品の原案、原作には当たらないとの判断された事が全ての漫画家にとって悪夢のような大問題なのです。


岡崎氏ツイート5

注目すべきは、最後の岡崎氏のツイート。

  • 漫画家が最初に原案プロットを作り、キャラクターデザインをしていた。
  • 時系列で原作肩書きの方の作品参加以前である事を裁判長は認めている。

あらためて、講談社側のWebを確認すると、以下の記載がある。

  • 原作者として水木さんが編集部で人選された。
  • 基本的なコンセプトと設定は、漫画家のいがらしさん、原作者の水木さん、担当編集者である清水の3人で話し合って決めていった。

で、地裁の判決文を読むと、

原告本人,被告五十嵐本人)及び弁論の全趣旨によれば、本件連載漫画の制作経過等に関し、以下の事実が認められる。
(一) 本件連載漫画は、昭和四九年一一月ころ、当時講談社との間で専属契約を結んでいた被告五十嵐の「なかよし」における新連載として企画され、「なかよし」編集部によって、原作者を付すことが決められ、その原作者として原告が人選された。そして、そのころ、原告、被告五十嵐、担当編集者の間で、「あしながおじさん」や「赤毛のアン」などのいわゆる名作物のように、孤児の少女が逆境にめげずに幸せになっていくという、本件連載漫画のストーリーの基本的な構想が決められた。
(二) その後、本件連載漫画は、毎月の連載回ごとに、おおむね以下のような手順により制作された。
(1) 原告が、各回ごとの具体的なストーリーを創作し、これを四〇〇字詰め原稿用紙三〇枚から五〇枚程度の小説形式の原稿にして担当編集者に渡す。その際、担当編集者が原稿をみて要望を述べ、それに応じて原告が手直しをする場合もある。
(2) 右原稿のコピーを担当編集者が被告五十嵐に渡す。被告五十嵐は、右原稿を読み、漫画化に当たって使用できないと思われる部分を除き、その他の部分に基づいて、紙面にコマ割を行い、絵を簡略化した形で描き、吹き出しの台詞などを加えた「ネーム」と呼ばれる漫画の草案を作成する。この段階で、出来上がった「ネーム」を担当編集者にみせて打ち合わせを行い、必要があれば被告五十嵐が手直しを行う。
 「ネーム」作成の段階で、原稿が分量的に一回の連載に収まり切らない場合には、担当編集者から原告にその旨連絡して、原告の了解を得る。その際、新しい終わり方について、原告が新しいアイデアを出したり、原稿の修正をすることもある。
(3) このようにして出来上がった「ネーム」に基づいて、被告五十嵐が鉛筆で漫画の下書きを作成し、その際に人物の服装や背景等が決められる。その後、被告五十嵐が右下書きにペンを入れ、最後に鉛筆の下書きを消して漫画が完成する。
… 略 …
(1) 本件連載漫画の各連載回ごとの具体的なストーリーの展開、すなわち、いかなる時と場所において、いかなる人物が登場し、いかなる意図の下に、いかなる行動をして、場面が展開していくかについては、おおむね原作原稿の内容に沿ったものとなっている。原作原稿にある場面が省略されていたり、原作原稿にない場面が付加されていたり、場面展開の順序が原作原稿と異なったりする部分も一部にみられるが、それによってストーリーの基本的な展開が異なるとまで評価できるものではない。
(2) 本件連載漫画中の登場人物の吹き出しの台詞や内面における思考・心情の記述については、原作原稿の記載をそのままあるいは同趣旨の内容を多少表現を変えて用いているものが多く、原作原稿にないものを付加していたり、原作原稿にあるものを省略している部分もみられるが、それによってストーリーの基本的な展開に変更を来すようなものではない。
(3) 人物の表情・服装・動きや風景については、原作原稿中に指示があり、これに基づいて漫画が作成されている部分もあるが、原作原稿中に格別の指示がない部分もある。


地裁判決文抜粋

予めの方向性のような物は決めていたようだが、大筋や結末・キャラクターデザインまで決めていたようには読めない。
多少はコミットはしているようだが、判決文を読む限りは、比重は高くない様子。要約は原作否定の根拠にはならんだろうと。
なので、個人的には、当初見解と変わらず。