冷却剤の提供を断った?

 少し前に、首相がアメリカからの支援を断ったという主旨の報道が有った。

原発事故直後、日本政府が米の支援申し入れ断る




読売新聞 3月18日(金)7時8分配信


 東京電力福島第一原子力発電所の事故を巡り、米政府が原子炉冷却に関する技術的な支援を申し入れたのに対し、日本政府が断っていたことを民主党幹部が17日明らかにした。


 この幹部によると、米政府の支援の打診は、11日に東日本巨大地震が発生し、福島第一原発の被害が判明した直後に行われた。米側の支援申し入れは、原子炉の廃炉を前提にしたものだったため、日本政府や東京電力は冷却機能の回復は可能で、「米側の提案は時期尚早」などとして、提案を受け入れなかったとみられる。


 政府・与党内では、この段階で菅首相が米側の提案採用に踏み切っていれば、原発で爆発が発生し、高濃度の放射性物質が周辺に漏れるといった、現在の深刻な事態を回避できたとの指摘も出ている。


 福島第一原発の事故については、クリントン国務長官が11日(米国時間)にホワイトハウスで開かれた会合で「日本の技術水準は高いが、冷却材が不足している。在日米空軍を使って冷却材を空輸した」と発言し、その後、国務省が否定した経緯がある。


最終更新:3月18日(金)8時12分


読売新聞


Yahoo!ニュース

で、関連すると思われるアメリカの報道は以下で、

UPDATE 1-US did not deliver coolant to Japan nuclear reactor
更新1 アメリカは提供しなかった、冷却剤を、日本の原子炉へ。




Fri Mar 11, 2011 5:41pm EST


The U.S. military did not provide any coolant for a Japanese nuclear plant affected by a massive earthquake on Friday, U.S. officials said.
アメリカ軍は提供していない、なんらかの冷却剤を、日本の原子力発電所へ、大規模な被害を受けた、金曜日に(←)、米政府当局者は語った。


U.S. Secretary of State Hillary Clinton earlier had said that U.S. Air Force "assets" had delivered "some really important coolant" to a Japanese nuclear power plant.
ヒラリークリントン国務長官は、以前語った、アメリカ空軍は"物資"を提供した、"いくらかの非常に重要な冷却剤"を、日本の原子力発電所へ。


One U.S. official said he believed Clinton was told Japan had requested the material, that the United States had agreed to provide it, and that an operation to do so was under way.
米政府当局者の一人の、彼は信じていた、クリントンが告げたと、日本が原料を要求した事を、アメリカは同意した、提供する事を、そして、一つのオペレーションが実行され、進行中だった。


Ultimately, however, Japan did not need assistance from the United States but Clinton did not appear to have been updated before she made her public remarks.
最終的には、それにもかかわらず、日本は支援を必要としなかった、アメリカからの、しかし、クリントンは表明しなかった、変更された事を、彼女が彼女の公的な発言を行う前には。


"We understand that ultimately the Japanese government handled the situation on its own," said another U.S. official, who spoke on condition of anonymity.
"我々は理解した、最終的に日本政府が処理するのを、自身の状況を"別の米政府当局は語った、匿名を条件に。


UPDATE 1-US did not deliver coolant to Japan nuclear reactor - Reuters( *1 )

要は、

  • 元々は日本から事前に要求している。
  • 結果的に必要性がなくなっただけで、米国もその事は理解している。

というように読み取れる。
[ Coolant ]は冷却剤の事だが、水にまさる冷却剤が存在すると思えないし( *2 )、わざわざ水を提供するとは考え難いので、何を指すのかは不明。恐らくは冷却装置の事かとも思うので、米軍がポンプ車を提供するような情報があったように記憶しているので、その事かもしれない。

 いづれにしろ、この読売新聞の記事はかなり眉唾な様子。そもそも、民主党関係者からのリークと言うのが変。正直、日本の将来より、菅首相を陥れる事を目的にしているとしか思えない。それにしても、野党の自民党でさえ、何だかんだ言っても協力しているのに、身内の民主党関係者から造反が出るとは( *3 )。
( 上記取り消し線部は、現時点では私の間違いと認識しています。本来なら削除すべきかも知れませんが、暫く掲載していた為、取消線にて掲載しています。 )


 [ Coolant ]がホウ酸だとすると、辻褄が合うようにも見える。ホウ酸を確保しようとして打診したが、取りあえずは確保できたという事だろうか。但し、フランスや韓国等のホウ酸提供を断ったというニュースは無いので、アメリカのみ断っている点は変。第一、ホウ酸は冷却剤ではない。もっとも、冷却剤として誤認されていた可能性は有るが( *4 )。
 また、以下の記述は

米側の支援申し入れは、原子炉の廃炉を前提にしたものだったため、日本政府や東京電力は冷却機能の回復は可能で、「米側の提案は時期尚早」などとして、提案を受け入れなかったとみられる。


 政府・与党内では、この段階で菅首相が米側の提案採用に踏み切っていれば、原発で爆発が発生し、高濃度の放射性物質が周辺に漏れるといった、現在の深刻な事態を回避できたとの指摘も出ている。

以下の報道と、

原子炉に海水注入決断、廃炉も…福島第一1号機


 地震による自動停止で原子炉内の圧力上昇と過熱を引き起こし、炉心溶融が心配されていた東京電力福島第一原発1号機に、東電は海水を注入するという決断をした。


 枝野官房長官が12日夜の記者会見で明らかにした。


 海水は、海から引いてたくさんの量を使用できるので、冷却の効果が高い。もともと原発には緊急用の海水注入系があり、温めた蒸気の冷却などに海水を使用している。原発が海辺に建設されるのは、このためでもある。特に、今回の緊急冷却では、海水にホウ酸を添加して使用する。原発の水は、冷却材であると同時に、中性子の速度を落として核分裂反応を起こしやすくする効果がある。


 水を注入した結果、再び核分裂が活発化しないよう、反応を抑えるのがホウ酸の役目だ。ホウ酸注入は、非常時の冷却では効果があり、軽水炉には専用の注入システムが常設されている。問題は、1号機の今後だ。海水を使用した場合、設備の復旧が難しくなる。特に今回の事故では、核分裂によって生じた放射性物質が外部に放出されていることから、ウラン核燃料の少なくとも一部が、金属被覆を溶かして露出し、融解を引き起こしている可能性がある。


 そのような深刻な汚染が起きたうえに海水を注入した原子炉を、再び健全な状態に戻すのはコストもかかり、実現はかなり難しい。


 仮に、原子炉を廃炉にする場合、国への審査手続きが必要になるほか、放射能の高い核燃料の冷却、施設の放射能汚染を取り除く作業(除染)などが必要になる。また、構造物も40年にわたる運転で中性子線にさらされ、放射化しているため、放射線の影響を防ぐための措置を講じた上で解体する必要がある。


(2011年3月12日23時16分 読売新聞)


http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110312-OYT1T00810.htm

記載が符号する感じで、ホウ酸の投入が遅れた事を指すのかもしれない。何れにしろ、[ 技術的な支援 ]や[ Coolant ]が何を意味するのか明確にならないと、推測の域を出ない感じだ。さらに以下のような記事も有る。

大村知事が首相批判 「米の冷却剤申し出断った」


2011年3月20日


 大村秀章知事は18日、豊田市で開かれた会合で「福島第1原発で1号機が爆発した時、米国が急速冷却剤を提供すると申し出たが、菅直人首相は断った。週刊誌などにも出ているが、これは事実だ」と発言し、「政治家に必要な決断ができていない」と菅政権の対応を批判した。


 大村知事は「冷却剤を使うと、1基5000億円の原子炉が利用できなくなる。企業論理では『もうちょっと待って』となる」とも述べ、菅首相東京電力の主張に押されたとも指摘した。


http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20110320/CK2011032002000127.html

但し、ニュースソースが同じポイっので、信頼性については何とも。

 ネットで検索すると[ 金属ナトリウム ]の事ではないのかという記述もあるが、当初は日本側から依頼している様子なので、これも変。何れにしろ、先に記載したように、[ Coolant ]が何を指すのかが判らないと、何とも言えない。
 英文の日本語訳がロイターから出ていた。

補足

 コメントでも指摘を受けましたが、時系列的な要素を考慮すると、[ Coolant ]は[ ホウ酸 ]の可能性が高いと思われます。私自身は、ホウ酸だとした場合の疑問として、以下を提示しましたが、

但し、フランスや韓国等のホウ酸提供を断ったというニュースは無いので、アメリカのみ断っている点は変。

各国のホウ酸提供報道を時系列に並べると、以下のようになります。

  • アメリカのCoolant提供停止は11日(ワシントン)
  • 韓国のホウ酸支援は16日(ソウル?)
  • フランスのホウ酸支援は17日(パリ?)

韓国が16日に日本に支援することにしたホウ酸(H3BO3)は... 以下略。
<東日本大地震>原子炉の核分裂抑制するホウ酸、日本に53トン緊急支援 | Joongang Ilbo | 中央日報

バルロ仏外務省報道官は17日、仏原子力大手アレバと仏電力公社(EDF)が同日、東京電力福島第1原発事故での核分裂反応を抑えるためのホウ酸100トンと放射能の防護服1万着、手袋2万組、防護マスク3000個を日本に送ったと述べた。以下略。


http://sankei.jp.msn.com/world/news/110318/erp11031800500001-n1.htm

又、当初、早い段階で海水注入する様子だったらしい事と合わせると、

  1. 早期にホウ酸入り海水の注入が実施される可能性を考慮して、ホウ酸の確保を進めていた( 米国へ要請? )。
  2. 東電が渋り、一旦、棚上げ(米国へキャンセルを連絡)。
  3. 12日20時20分に、ホウ酸入り海水を注入。
  4. ホウ酸が不足する可能性が出てきたので、再度要請。
上記のような流れだった可能性が考えられ、これは、一連の報道とも、ほぼ一致します。

*1:翻訳は英語風の文法で日本語を記載している。いづれにしろ、私は英語はダメダメなので、おかしな所が有ったら、ご指摘願いたい。

*2:熱容量と気化する温度の点で。但し、水に何らかの物質を含ませる事で、冷却能力を向上させられる可能性は有るが、文脈からみて、そういう意味には取れない。

*3:もっとも、肝心の菅首相自身が、自民党を内閣に取り入れようとするなど、変では有るのだが。

*4:一人ではなく、複数関与しているので、誤認なら途中で訂正されても良さそうな気はする。