ヘッドライトを改造

 自転車のヘッドライトを改造した。改造したのは以下の機種。

 まずは、LEDをW42180に変更。念の為、変更時に以下の熱伝導グリスをLED裏面に塗布( *1 )。 W42180を選択したのは、幾つかのBlogで改造用のLEDとして上げられていたのと、入手のしやすさ及び秋月さんのWebでのデータで、交換可能な形状では電流当りの明るさが最も明るい中で、色温度が低い事から。

3W級 白色パワーLED 100ルーメン W42180: LED(発光ダイオード) 秋月電子通商-電子部品・ネット通販
型名明るさ( lm at 350mA) 色温度(K) Vf( V at Typ )
W41280 1006300 3.25
OSW4XME3C1S 1006500 3.3
OSW4XME3C1E 1006500 3.3
OSM5XME3C1S 903000 3.3
KLC8-Bx 855550 3.3
※ OSシリーズの明るさは、700mA時の明るさを1/2にしたものです。
 交換した結果としては、かなり明るくなった。但し、色温度が高いので、やや青みがかった感じとなる。色合い的には、もう少し色温度が低い方が、体感的な明るさは増すのではないかと思う。
 元々は、中心光に対して周辺光が暗く心もとない感じだったのが、周辺光が明るくなり、これなら使えるレベル。中心光のエリアもやや広がった感じだ。又、周辺光はレンズとの関係なのか、やや鋭角になり横への拡散も減った感じだ。元々はかなり横に拡散していたので、もしかしたら、生産時のLEDは設計時とは異なっている可能性が有るかもしれない。
 で、次に電流制限抵抗をeneloop用に変更。まず、実測値から元々の仕様が、以下のようなものと仮定すると、

  • LEDの順電圧  : 2.95V ( 実測値 : 2.96V )
  • 電流制限抵抗  : 7.5Ω
  • アルカリ乾電池 : 1.65V ( 実測値 : 1.625V ) *2

最大電流は以下のようになる。

( 1.65 * 4 - 2.95 ) / 7.5 ≒ 0.487 A
 次に、改造後の仕様は以下のようになるから、

同じ電流を流すのに必要な電流制限抵抗は、以下のようになる。

( 1.45 * 4 - 2.9 ) / 0.487 ≒ 6 Ω
 抵抗の付け替えは面倒なので、並列抵抗を追加するとして、


R = 1 / ( 1 / R1 + 1 / R2 ) より R2をXとして、

6 = 1 / ( 1 / 7.5 + 1 / X )
6 = 1 / ( 7.5X * 1 / 7.5X * 7.5 + 7.5X * 1 / 7.5X * X )
6 = 1 / ( X / 7.5X + 7.5 / 7.5X )
6 = 1 / ( ( X + 7.5 ) / 7.5X )
6 = 7.5X / ( X + 7.5 )
6 * ( X + 7.5 ) = 7.5X
6X + 6 * 7.5 = 7.5X
7.5 X - 6X = 6 * 7.5
1.5X = 45
X = 45 / 1.5 = 30Ω

Ix = ( 1.45 * 4 - 2.9 ) / 30 = 0.0967A
Wx = 0.0967 * 0.0967 * 30 = 0.2805W

以上より30Ω(1/2W)となる。この結果、電流がどのくらい増加するかというと、


( ( 1.45 * 4 - 2.9 ) / 6 ) / ( 1.45 * 4 - 2.9 ) / 7.5 ) = 1.25
1.25倍だ。これで、eneloopでもアルカリ乾電池と同じ明るさとなる。

 尚、電流制限抵抗の変更はeneloop用としてで、変更した場合はアルカリ乾電池の使用は不可となるので注意して欲しい。又、アルカリ乾電池の場合、抵抗値の変更は不要です。
 所で、オリジナルの場合、0.487Aも流れるのだからWは、


0.487 * 0.487 * 7.5 ≒ 1.78 W
となるのだが、付いている抵抗は、どう見ても1Wクラス。仮に1Wだとすると、この設計はどうかと( *4 )。
 ちなみに今回は以下のように、

( 1.45 * 4 - 2.9 ) / 7.5 ≒ 0.387 A
0.387 * 0.387 * 7.5 ≒ 1.12 W
12%増しなので、まあ此の位なら何とかなるでしょうという感じ( *5 )。
 又、上記の電流値から考えて、ドライバの駆動電流は500mA〜600mA程度と推測されるので、少なくとも最大電流が500mAを超えるような改造は、しない方がいいだろう。
 今回、LEDとしてW42180を選択しのだが、カタログ上の仕様は、

  • 順電圧 : Typ = 3.25V ( min = 3.0V, max = 4V )

となっていたのに、実測すると2.905Vと最小値より約0.1Vも低い。LEDの場合、バラツキが多きいとはいっても、カタログの最小値よりも低いのは、マズイのではないだろうか。又、同梱されていた説明書には[ Uランク ]と記載されていたので、ランク分類して販売しているようだ。

 さて、改造の結果としての明るさだが、デフォルト時最大50lm( *6 )と仮定し、電流値換算で1.2Vに低下するまで使用した場合( カッコ内は1.1V時 )、

  • アルカリ乾電池(改造前) : 50〜25lm
  • アルカリ乾電池(改造後) : 141〜72(〜56)lm
  • ニッケル水素電池(改造) : 138〜90(〜71)lm ( *7 )

となり、アルカリ乾電池でも1.2V時で改造前より22lm明るい。ニッケル水素電池の場合は1.2Vでも改造前よりも40lm明るい事となるし、1.1V時でも21lm明るい事となる。

補足

 ドライブ回路による電圧降下は考慮していませんが、問題は無いでしょう。
 又、各電池の性能は以下の通りで、

アルカリ乾電池では、初期電圧1.6Vから1.4Vまでは急速に低下し、勾配は鈍るものの、それなりにキツイ勾配でさらに1.1Vまで低下します。これに対して、ニッケル水素電池は、初期電圧1.4Vから1.3Vまでは急速に低下しますが、低下幅はアルカリ乾電池の1/2の1Vで、1.3Vから1.2Vまでの勾配は緩やかになっています。
 仮に1.2Vまで使用するとして、アルカリ乾電池の変動幅4Vに対し、ニッケル水素電池は1/2の2Vですから、抵抗値をニッケル水素電池に合わせる事で、光量変動幅を1/2に抑える事が可能です。

補足2

 電圧の変化幅が1/2に成るという事は、総量としての電流は逆に多く流れる事となります。eneloop用に改造した場合の点灯時間ですが、おおよそ1/3程度( 詳細な計算又は計測はしていません )、つまり20時間程度と考えて下さい( *8 )。
 又、改造による発熱ですが、電流値や順電圧に差は有りませんので、あまり差はないと考えて良いでしょう( 未確認 )。尚、改造による明るさの違いについては、以下を参照してください。

補足3

 雨や霧などの場合は、波長は長い方が有利なので、色温度は低い方が良い事となります。なので、雨天での性能を重視するのなら、[ KLC8-Bx ]も選択枝の一つでしょう。実際、自動車の車検の上限は6000Kと言われています。ただ、5550Kは雨天用としては、まだ高すぎる感じなので、どの程度改善されるのかは不明( さすがに[OSM5XME3C1S]の3000Kは低すぎかと *9 )。

*1:元々は塗布されていない。

*2:新品の単三型アルカリ乾電池での実測値。

*3:充電完了直後の実測値。

*4:アルカリ乾電池の場合、急速に1.4Vくらいまでは電圧が下がるので、問題無いという設計のようだが、さすがに78%オーバというのは、いただけない。

*5:実際には多少の安全率を見込んで、10〜20%オーバくらいで設計していると考えるので。又、ニッケル水素電池の場合、1.3Vまでは急速に低下する事からも、実用上は問題無い。

*6:計測したわけではないので、実際は不明。検索するとデフォルトは50mlくらいという記載が有るので、それを基準としてみた、但し、その記載も根拠が有る様子ではないが、100lmのSG-305がHL-EL520の2倍くらいの感じ。

*7:抵抗値を変更した場合。

*8:カタログの60時間はやや過大で、未改造60時間後はかなり暗いので、その点も考慮して1/3くらいかと。

*9:3000Kだと、ほぼフォグライト並。霧などには有効だろうが、ヘッドライトとしては、色温度が低すぎ。