サマーウォーズ : 続き

 DVDをレンタルしてみたのだが、酷い作品だ。元ネタはウォー・ゲームだろうか。このウォー・ゲームだが、関係者がコンピュータシステムを全く理解していない事が、まるわかりの酷い映画で、それはあり得ないだろうという内容。そう意味では、このサマーウォーズも同じ。サマーウォーズのネットワークシステムは出鱈目だ。
 OZがセカンドライフのような特定のシステムの事を指すのか、インターネットそのものを指すのかは不明だが、いずれにしても、当然、OZと現実世界とは連動できない。セカンドライフやプロバイダのアカウントで、各種インフラシステムへログイン出来るわけではないのだから、OZも同様だ。

 どうも、OZという巨大なコンピュータシステムが全てを管理している印象が有るが、現実のネットワークは一極集中方式ではなく、分散システム。当然、コンピュータは目的別に多数存在する事となる。又、インターネット上のWebサイトが置かれているサーバとしてのコンピュータと異なり、インフラを制御しているコンピュータは、インターネットとは接続されていない。従って、電気・ガス・水道・電話は勿論だが、交通・医療等を操作出来るハズもなく、ましてや軍事関連コンピュータの操作など問題外( ((実際に、インターネットに接続されているインフラ用コンピュータが有るとして、それをクラッキングすれば別だが、OZの話は、OZへのアカウントでの話)) )。

 特に暗号に関しては、無茶苦茶というか余りにも酷いとしか言いようがない。暗号に関しては以下のBlogで詳しく解説されているが、

Athlon2.2GHzのPCを連続稼働させて2048bit(10進数で617桁 *1 )の因数分解にかかる時間はおおよそ10,000,000,000,000,000年


サマーウォーズ:曜日の求め方とか2056桁の暗号とかの解説 - A Successful Failure

市販されている、パソコンで1兆年。おそらくはスーパコンピュータでも数十億年だ。人間が一晩で解けるような代物ではないし、ましてや暗算など不可能。
 又、アカウントの扱いも変だ。そもそも複数のアカウントの保有は基本的には不可。これは、AIがクラッキングして可能なように変更しているわけだが、わざわざ貨幣のように移動出来るように変更しているハズも無いのに、賭けで移動している始末。ついでに言うと、負けてもクラッキングしているのだから取り返せば済む話、この部分だけ正攻法に拘る理由は無い( *2 )。て、いうか、そもそもクラッキングしているのだから、アカウントに拘る必然性が無い。
 さらにネットワークだけではなく、ストーリも酷い。

  • ジャンケンで、美人の先輩の偽彼氏。
  • 主人公は数学オリンピックレベル。
  • ヒロインは花札の名人級。
  • 先輩のおばあちゃんは超大物。
  • 先輩の親戚に、トップレベルのゲーマがいる。
  • 先輩の親戚に、天才科学者がいる。
  • 先輩の親戚に、甲子園クラスの高校生がいる。
  • 先輩の親戚に、軍事機材を調達出来るような人物がいる。
  • 先輩の親戚に、スーパコンピュータを扱っている人物がいる。
  • AIのクラッキング事件に遭遇。
  • 誤解で全国指名手配。
  • 暗号の解読ミスで、とりあえず無罪?。
  • おばあちゃんが突然ポックリ。
  • スーパーコンピュータが熱暴走。
  • 偶然発見されたおばあちゃんの手紙で一家団結。
  • AIが花札勝負に応じる。
  • 外国人が、みんな花札に詳しい。
  • 偶然、人工衛星も戻ってきて、それを落下させる。
  • 温泉が湧く。

と、呆れるくらい偶然が次々と展開される。なぜ、こんなに偶然の数珠繋ぎのようなストーリになったのかだが、これは、インパクトが有るというかウケるというか、そう言うシーンを正に数珠繋ぎにしたストーリだからだ。先の偶然の要素の記述と重なるが、

  • 凄い家屋敷と大物のおばあちゃん。
  • おばちゃんに依る偽彼氏の品定め。
  • 犯人として全国指名手配。
  • トップレベルのゲーマによる最初の反撃。
  • おばあちゃんが要人を叱咤激励。
  • おばちゃんの突然の死と家族の悲しみ。
  • ハイテク機器の登場。
  • 池に漁船を浮かべる。
  • スーパコンピュータを氷で冷やす。
  • AIを仮想の城に閉じ込める。
  • 花札勝負。
  • 花札勝負に世界中が協力。
  • 数学の名人による暗号解読。
  • 人工衛星の落下。
  • 甲子園での優勝

と、何の脈絡もなくウケそうなシチュエーションが、次から次へと展開される。当然、ストーリは、登場人物の意思に依るものでは無く、シチュエーション有りきだから、家族の心情の変化も突然で、何の脈絡も無い、無茶苦茶な物と成り、結果としては内容の全く無い、薄っぺらな作品と成り果てている。
 実際、わびすけの年齢が破綻している点は、まさにシチュエーションを繋げただけという事を、端的に表しているし、本来なら何の役にも立ったないハズのスーパコンピュータの登場や、城に閉じ込める意味不明なシーンなども、同様だ。特にラスト部での全員での食事のシーンは、ケータイ小説のあのフレーズ( *3 )を思い出させる。そういう意味では、まさしくケータイ小説レベルの作品で、家族の絆もクソも無い。
 ついでに記載すると、おばあちゃんが、懸命に各種活動をしている所へ電話をして叱咤激励しているが、ハッキリ言って、はた迷惑そのもので、余りにも非常識な行為だ。私なら、眺めてなどセズ速攻で止めさせる。人が死んだら、取り返しがつかないからだ。
 この、どうしようもなく酷い作品が、



サマーウォーズ - Wikipedia

上記のように、各賞を総なめにしていると言うのだから驚きを通り越して、呆れ果ててしまう。さらに、ネットで検索しても好評価が多数で、酷評は少数。どうやら、気持ちの良いシチュエーションの連続なのが受けたようだが、せいぜい[ 暇つぶしに、疲れた頭で深く考えすに、ボーと見る分には、見れない事もない ]というレベルの作品。とてもまともに見れるような作品では無いのにだ。
 で、先の賞で、特に気になるのが、



サマーウォーズ - Wikipedia

これなのだが、これってSF関連の賞ですよね?。まあ、前々から日本のSF界は、おかしいとは思っていた。良作が適時発表されているにも関わらず、SF冬の時代と称したり、優秀な作品や作家を無視したかと思うと、どうしょうもない駄作や作家を評価したりとか。
 話が横に逸れた。先の賞には、各種脚本賞も有るようだが、当然評価に値するような物では無い。一体、どうなっているのだろうか。これは、観客のレベルも相当下がっているが、審査員のレベルも世界的に相当下がっているという事だろうか。何だが、暗澹たる気持ちにさせられる作品だ。
 そうそう、あの平坦な声もどうにかして欲しい。確かに、ああいう声が特徴で人気の出た声優もいるが、扱いの難しい声で、だれもが出せる物でもないし、誰も( *4 )が使いこなせる物でもない。実際、この作品の場合は、単に声優が下手なだけだろう。

*1:作品では2056と成っているが、2のべき乗にするのが普通。2056は2のべき乗ではない。

*2: 平行して、別経由で攻略されているので、取り返せなかったという可能性は有るが。

*3:今夜はからあげよ

*4:監督