むなしい記事

 毎日新聞に虚しい記事[ http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20090530k0000m070138000c.html ]が載っている。

そして今月、北朝鮮が地下核実験を実施した。「成功」を伝える発表文は「科学者、技術者らの要求に従い」と始まる。作っては試し、改良してまた試す。こうした試行錯誤なしに科学の発展はない。だが、科学者たちは結果の深刻さについて一度でも想像したことがあるだろうか。そう考えたらむなしくなった。
http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20090530k0000m070138000c.html

 上記内容を良く読んで欲しい。[ 北朝鮮の党関係者ではなく、科学者が嬉々として自主的に核開発を行った ]と、元村有希子記者は解釈したように読める。北朝鮮の発表など信用する人などいないであろうし、ましてや、強制的に研究に従事させられている可能性も十分に考えられるお国柄なのに、元村有希子記者は一体どうやって北朝鮮の科学者達に確認を取ったのだろうか。*1
 さらに記事は以下のように続くが、

戦時中、米国で原爆開発計画...
- 中略 -
砂漠の真ん中の実験場は放射能に汚染され、今も自由に立ち入れない。
http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20090530k0000m070138000c.html

これは、まったくの出鱈目で、トリニティ実験に以下のように記載されているように、放射線はかなり低下しており、立入も可能となっている。元村有希子記者は、確認すらしないで推測で記事を書いているらしい。

実験から50年以上が経過した現在でも実験場跡地では通常環境の約10倍というわずかな残存放射線が検出される。アメリカ陸軍当局は、トリニティ実験場に1時間滞在する間に浴びる放射線の量は食物を摂取したり日光を浴びたりする際に受ける放射線量よりもずっと少ないとしている。
 - 中略 -
トリニティ実験場は現在も「核ツアー (atomic tourism)」の客たちにかなり人気の目的地となっているが、実験場跡が開放されるのは年に2回、4月と10月の第1土曜日のみである。2005年7月16日にはトリニティ実験60周年を祝う特別ツアーが企画され、数百人(報道によっては数千人)の訪問者がこの記念日を祝うために集まった。
トリニティ実験現 - 現在の実験場

 それに[ 放射能に汚染され ]とは、どういう意味であろうか。放射能とは、[ 放射線を出す能力 ]の事で有る。[ 能力 ]が[ 汚染する ]とは、どのような事なのだろうか。おそらくは[ 放射性物質により汚染され ]とすべき所を、放射線について全く理解していないが為に、先の記述となったのだろうが、放射線云々以前に日本語として変な事に、かりにも記者ともあろうものが気づきもしないのだろうか。
 又、以下の記載だが、

政治家が科学者を利用し、科学者は無邪気に目標を追いかけ、多くの命を奪い、地球を汚し、誰ひとり幸せにしなかった
http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20090530k0000m070138000c.html

この部分が何をさしているのかはハッキリはしないが、マンハッタン計画については、

ナチス・ドイツが先に核兵器保有する事を恐れた亡命ユダヤ人物理学者レオ・シラードらが、1939年同じ亡命ユダヤ人のアインシュタインの署名を借りてルーズベルト大統領に信書を送ったことがアメリカ政府の核開発への動きを促す最初のものとなった。
マンハッタン計画 - 進言

元々は、[ ナチス・ドイツ核兵器保有するかもしれない ]という事が発端であり、

1945年3月、連合国によりドイツが原爆を開発していない確証が得られると、ジェイムス・フランクやシラードらは、フランクレポートの提出など、対日戦での無思慮な原爆使用に反対する活動を行った。
マンハッタン計画 - 原爆投下

疑惑解消後は反対運動が展開されているし、ロバート・オッペンハイマーは、

オッペンハイマーは後年 - 中略 - 核兵器開発を主導した事を後悔していることを吐露している。戦後、原子爆弾を生み出したことへの罪の意識からか、日本の学者がアメリカで研究できるよう尽力するようになった。
ロバート・オッペンハイマー 後年

と後悔しており、[ 無邪気に目標を追いかけ ]ていたわけではない。
 尚、元村有希子記者は、blog[ http://spaces.msn.com/members/rikei/ ]( 移転先 : 理系白書ブログ - Yahoo!ブログ )も有るようだ。
 それにしても、一体全体、毎日のチェック体制はどうなっているのだろうか。

*1:放射線障害になっている北朝鮮科学者の記事がどこかに有ったと記憶しているが、リンク先は忘れた。