折り込み済みだった彗星衝突

 野尻抱介氏の[ ピニェルの振り子 ]読んで驚いた。内容的には、彗星の衝突による惑星の滅亡という、SFとしてはパターンとも言えるものだが、実はそのカタストロフが、惑星の生物には進化論的に折り込み済みだったという物。


 常夏で冬の無い惑星に、冬眠能力が有る動物。それは、定期的に訪れるカタストロフに依る[ 核の冬 ]に対する適応。そして、そのカタストロフも、ある生き物が作為的に起こす現象だった。
 という、中々凝った設定。当然、[ 彗星の衝突 ]を回避すれば生態系が破壊されて、結局は滅亡が待ち受けるし、衝突すれば、生態系はどうあれ、惑星上の文明は深刻な危機を向かえるというジレンマに陥る事となる。[ 進化論的に折り込み済み ]という設定も驚きだが、彗星が衝突しても回避しても、結末は同じ事となるというジレンマにも驚愕。
 そして、その回答が、巨大なカタストロフだから問題なので、人為的に小さなカタストロフを短い周期で起こせば良いというのも驚き。答えだけを見れば、確かにそうなのだが、読んでいる途中では、正直、思いつかなかった。

 いづれにしろ、[ 彗星衝突物? ]としては、秀作と言っても言いすぎではないだろう。これだけの作品が、あまり知名度が高くは無いというのが、また驚きでもある。

 さて、この作品、[ 銀河博物誌シリーズ1 ]となっていて、一応シリーズもののようで楽しみでも有るのだが、今の所、2000年の発表後、続編が出る兆候は無い。